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未知なものに立ち向かうしなやかなたくましさと人間関係を育む優しい心!昭和学院小学校

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未知なものに立ち向かうしなやかなたくましさと人間関係を育む優しい心!昭和学院小学校

子どもたちに本当の意味で必要な教育とは何か?という観点で、様々な方のお話を聞いていくシリーズ。

今回は昭和学院小学校です。

未知なものに立ち向かうしなやかなたくましさと、人間関係を育む優しい心とは?青木校長先生にお話を伺いました。

もくじ

    昭和学院小学校とは

    千葉県市川市東菅野二丁目にある昭和学院小学校は1940年に開学し、幼稚園から短大まである総合学園です。
    「人が育む、人と歩む、全人教育。」を理念としています。
    建学の精神である「明敏謙譲」は「明朗にして健康 自主性に富んだ子供 謙虚で個性豊かな人間」で、「高い学力と優しい心」を育もうとされています。
    英語教育、考える力を育てる言葉の教育、豊富な自然体験や実践を通して学ぶ科学的な力、気づきを元に考える力を育む授業作りに力を入れている昭和学院小学校。
    お話を伺う中で、「未知なるものに立ち向かえるように」という言葉が出てきました。

    未知なるものに立ち向かえるように

    昭和学院小学校では、建学の精神に基づき、小学校では高い学力と優しい心を育むのが教育目標。
    「高い学力はテストの点数を取るのではなく、これからの世の中で生きていけるように、未知のものに立ち向かえる力です。
    何が正しいか分からなくても試行錯誤して課題を解決していくことができ、それが結果的にテストの点数にも繋がります。基礎的な力をベースとしながら、その上に未知なるものに立ち向かえる力を考えています」

    「未知なるもの」とはどのようなものを指すのでしょうか。
    「世の中には、答えの出ないものはたくさんあります。たとえば、原発は本当に要らないのか。自然エネルギーだけで生きていけるのか。自動車産業で言えば、欧米は電気自動車にシフトしているが、それが本当にエコになるのかなど。
    それの子ども版です。単に公式を覚えれば解けるものではなく、答えがすぐには出ない、でもこれから生きていく上で考えていかないといけないこと。それが未知なるものです」

    未知なるものに立ち向かえる力を育むために、学び方が重要だそうです。
    「公式を覚えれば答えが出るのではなく、この方法がダメなら次の手を持っているとか、次はこうしてみようと思える子どもになるよう教育していくのが大切です。単なる知識ではなく、学ぶ力と言ってもいいかもしれません」

    未知なるものに立ち向かえる力を身につけるために大きな柱としているのが英語とICT(Information and Communication Technology」の略称で、日本語では「情報通信技術」)です。
    「ICTは情報を手に入れたり、何かを発信したりするときに重要なツールです。現代の子どもたちは、生まれた時からICT機器の中で育っているので、私たちが子供の頃とは大きく状況が異なります。ICT機器の使い方だけではなく、時にはICTが有効、時にはアナログがいい、あるいは本で調べる、人に聞くなど、選択肢の一つがICTになるようにと考えています。いつもICTに頼っていると選択肢が狭くなるからです。必要な時にICTを選択でき、それを使いこなせるようにしなくてはなりません」

    昭和学院小学校で英語の授業は小学1年生時から週に3時間。学習指導要領に定められているのは5、6年生で70単位(週に2時間相当)のため、大きく上回ります。
    どのような英語教育をされているのでしょうか。

    表現したい想いを持ち、表現する機会を多く持つ

    「英語はグローバルな社会の中で重要なコミュニケーションツールのため、必須だと考えています。小学1年生から週に3時間の英語の授業に加えて、一人一台端末の機器を使って、朝英語としてリスニングの時間があったり、選択した子はアフタースクールの中で英会話を受けられたりします。(アフタースクール:放課後のプログラム。正規の授業のカリキュラムとは別に、外部の講師を呼んで、子どもたちの選択制で希望制。スイミングや体操、英会話、プログラミングなど)」

    授業以外でも英語に触れる機会が多くあるようですね。
    「単なる文法、知識ではなく、表現したいという想いが大切です。元になる想いを持ち、それを活き活きと表現する場がたくさんあります。
    授業中オールイングリッシュの授業が展開されていたり、休み時間の英語の先生とのやり取りもすべて英語だったりという環境を作っています」

    英語での表現をするといっても、子どもたちが自分で考え、表現するのは日本語のため、英語は言語業育の一つという考え方をされているそうです。
    「子どもが自分で考え、表現するベースは日本語ですから、国語教育は大事にしています。読書指導として、1、2年生は年間100冊読書が目標。3年生以上には各学年に渡されている約30冊のお勧め図書のブックリストを全部読むことが目標です。全部読めたら表彰もあります。英語を含めた、言葉の教育も大切にしているのです」
    この言語教育は、人との関わりにも繋がっていきます。

    人は人との関わりの中で成長していく

    「その場にふさわしい丁寧な言葉を使ったり、相手の気持ちを想像してどんな言葉をかけるかを考えたりすることが、優しい心を育む上では大事なところです。日本語教育を通して心を育んでいます」
    ここに、言語教育に力を入れている理由があるのですね。

    「どれだけAIが発達しようとも、人は人と関わり合うことで成長していきます。どうすれば人と温かい気持ちで接していきながら、グローバルな世界で生きていけるのかを考えています」

    人と関わる際に必要なツールとしての言語が大切なだけではなく、課題発見、課題解決能力も重要になってきます。
    「大事なのは、まず何が問題なのか課題を自ら見つけること。いつも課題を与えられていると初めから受け身になってしまいます。
    これからの世の中は自ら課題を発見でき、自分なりに問題を設定できることが重要です。その設定した課題に対して、こうしてみたけどうまくできなかった場合、これがダメならこうしてみようと試行錯誤できるしなやかな強さを育てたいのです。
    勉強だけではなく人間関係にも同じことが言えます。
    ちょっとした挫折ですぐくじけてしまうのではなく、そこに負けないレジリエンス(回復力、復元力)が必要です。倒れてもまた立ち上がっていけるたくましさを育てたい。そのための学習であり、日常生活であると考えています」

    小さな優しさを見逃さずにその場で評価する

    「優しい心」を育むと言っても、数値には表しにくいもの。昭和学院小学校では、どのようにされているのでしょうか。
    「優しい心は数値に表せず、目に見えない部分です。担任の先生は子どもたち一人一人をしっかり見て、小さな優しさをできるだけ見逃さないでその場で評価するようにしています。例えば、誰もしてくれない掃除用具の片付けをしてくれてありがとうなどですね。小さな芽を育てていこうという姿勢です」

    先生方の声がけが子どもたちにも広がっていくのだそうです。
    「先生がその場で声かけをしていくと、子どもたち同士も何がいいのか、どんな言葉がけがいいのかが分かってきます。すると、子ども同士の優しいやり取りが広がっていくのです。優しい心を育むためにはその積み重ねが必要だと考えています」

    日々の優しい心の芽は保護者にも伝えられます。
    「その子の優しい場面を担任の先生が貯めていって、最終的には保護者面談で、こんな場面でこんな優しいところを見せてくれましたとお伝えしています。
    その場その場で消えていくやさしさの芽を見逃さないで育てていくのが、先生方の意識の前提となっています」

    「本当の分かる」を目指して

    昭和学院小学校には研究部があり、何を課題にして日ごろの授業を高めるかを日々検討されているそうです。
    「今やろうとしているのは、本当の分かるって何だろう、ということ。
    計算ができる、ひっ算ができるなどは、知識・技能の一部分でしかありません。
    本当に子どもたちが分かったと納得し、腑に落ちるには、どうなっていればいいのでしょうか。仮説としては”だったらこの場合はどうだろう”と他の問題に応用させる意識が働いたり、分かってない人に自分の言葉で説明してあげられたりする状態ではないかと考えています。
    自分の頭の中だけでの”分かった”は”本当の分かった”になっていません。自分の言葉でかみ砕いて説明できるようになって初めて分かったと言えます。
    子どもたち自身の表現やアウトプットに生かしていくにはどうしたらよいかと話し合いを始めたところです」

    取材で見る限り、授業は活発に行われているように見えましたが、そこにも課題があるのだと青木校長先生は話されました。
    「授業で、クラスの三分の一の子がにぎやかに手を挙げていると活発に見えますが、三分の二は分かっているのかどうか見えません。それを一人ひとりどうやって見ていくかが、本当に一人ひとりの力を伸ばす、ということにつながります」

    子どもには、プログラミングが好きな子もいればコミュニケーションを取るのが好きな子もいます。その子にとっての分かる、理解を追求していくということですね。
    「世の中に出たらそう簡単に答えは出ません。ここまでは分かったけど、ここから先は分かっていないと自分で分かっているということも、本当の分かるの一部分です」

    「加えて、その子に取っての”やりたい”を追求して行ける場を作ってあげることも重要です。
    どうしても与えられた場の中だと、みんなでこれをやりましょうという横並びの発想になってしまいます。確かにそれが必要な場面もありますが、教育の場としては、”自分はこれをこんな風にやりたい”と自分なりのスタイルを持たせてあげて、発揮させてあげたらいいなと考えています。
    自分らしさをいかに発揮させてあげられるかが課題です」

    いろいろなものに興味関心を持てる子に

    子どもたちが一人ひとり個性を発揮して適材適所で輝いていけることがこれからは必要になってきます。
    「昭和学院の中学校のカリキュラムを科学系、英語系、オールグランド、などコース分けしており、入学の時点からコースを選べます。自分の良さ、将来の夢を思い描きながら、中学校で特化できるように設置しました。
    そこに向けての小学校の6年間だと考えると、まずはいろいろなものに興味関心が持てる子どもになれるよう教育するのが前提です。いろんなことをやってみた中で、生き物が好きだなとか、科学系に興味があるなとか、自分の得意分野は英語系だな、などが高学年になって見えてきます。そして、中学校に入るときにコースを選ぶ。昭和学院小学校では、その流れができつつあります」

    子どもの興味関心に沿って挑戦でき、それを深められるように環境を整えられていらっしゃいます。

    人が未来。未来は今の積み重ね

    昭和学院小学校への取材の中で印象的だったのは「未知なるものに立ち向かうしなやかなたくましさ」を目指す教育であるということ。
    その教育は、子どもたち一人ひとりがやりたい事をやれて、答えのない問題にぶつかっても試行錯誤しながら生きていけるように、いわば「生きる力」を身につけさせるもの。
    そんな未来は、突然やってくるのではなく、日常生活、つまり「今」の積み重ねです。
    学校での勉強も、子どもの興味関心も、家庭での日常生活も全てが糧となり、子どもたちの未来に繋がっていきます。
    私たち大人は、子どもたちの優しさの芽、興味関心の芽、試行錯誤をする芽を育み、見守ることが大切ですね。

    昭和学院小学校

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